営業パイプラインとは、最初の接点から受注または失注までの進行中の案件を、段階ごとに一覧できるようにしたものです。各案件には現在の段階、金額、次の行動を記録します。よい営業パイプラインは、今日やるべきこと、停滞している案件、今月の着地見込みを毎朝すぐに答えてくれます。
営業パイプラインとは何か、地域の中小企業に売るときにどの段階で管理するか、ファネルとの違い、目標の受注に必要な案件数、そして最初の段階を実在する地域企業のリストで埋める方法をまとめました。
営業パイプラインとは、最初の接点から受注または失注までの進行中の案件を、段階ごとに一覧できるようにしたものです。各案件には現在の段階、金額、次の行動を記録します。よい営業パイプラインは、今日やるべきこと、停滞している案件、今月の着地見込みを毎朝すぐに答えてくれます。
営業パイプラインは、報告のための資料ではなく、毎日の作業ボードです。IBMの解説では、販売パイプラインを、各リードが販売サイクルのどの段階にあるかを視覚的に示すものと説明しています。これにより営業チームは販売の流れを把握し、次のステップを計画できます。
毎朝ボードを開いたとき、次の3つに答えられることが目的です。今日対応する案件はどれか。止まっている案件はどれか。月末までに目標へ届くだけの案件が上流に入っているか。この3つに答えが出ないボードは、見た目だけです。
日本ではSFA(営業支援システム)やCRMで管理する企業もあれば、Excelやスプレッドシートで始める個人事業主や小さな制作会社もあります。道具は何でも構いませんが、案件ごとに段階と次の行動と期日が書かれている必要があります。
フリーランスや小さな代理店、地域の店舗や事業者に営業する立場には、定義や段階の一覧より手前の疑問があります。最初の案件はどこから来るのか。何をもって次の段階へ進めるのか。案件は何件あれば足りるのか。この記事では、その3点に答えます。
基準は「営業側の作業」ではなく「買い手がとった行動」です。IBMのガイドが示す一般的な段階は、潜在顧客の開拓、リードの選別、初回接触、提案またはプレゼンテーション、交渉と合意形成、クロージングの順です。同じガイドは、各ステージを時間の経過や推測ではなく、具体的な行動に基づいて設定することが重要だとも述べています。
地域の企業へ電話、メール、訪問で営業する場合は、次の6段階が管理しやすい形です。名称は買い手の行動に合わせています。
企業名、電話番号、ウェブサイト、公開されているメールアドレスがリストに入っています。まだ連絡はしていません。
メール、電話、訪問、問い合わせフォームのいずれかで最初の連絡をした日付を記録します。フォローの日程はこの日付から数えます。
相手の担当者から、質問や断りも含めて人間の返信がありました。メールの開封通知だけでは、この段階に進めません。
課題、決裁者、今動く理由を確認し、面談または打ち合わせの日程が決まりました。
金額と期限を入れた書面を送り、相手の回答日または次の確認日が決まっています。稟議が必要な場合は、ここで検討期限を記録します。
受注なら契約の事実、失注なら理由を必ず残します。価格、時期、返信なしなど、理由は次月の改善に使える材料です。
案件が進むのは、買い手が行動し、その証拠が残ったときだけです。各段階の終了条件と、その段階で確かめる問いは次の表のとおりです。この表をチームで共有すれば、同じ案件を人によって別の段階に置くことがなくなります。
| 段階 | 終了条件 | この段階で確かめること |
|---|---|---|
| リスト化済み | 最初の連絡を送った | リストの件数と質は十分か |
| 初回接触済み | 人間からの返信が届いた | 文面と連絡手段は機能しているか |
| 返信あり(対話中) | 課題と決裁者を確認した | 正しい相手と話せているか |
| 商談確定(ヒアリング済み) | 面談が行われ、提案を依頼された | 解決すべき本当の課題があるか |
| 提案送付済み(社内検討中) | 可否の回答、または日付つきの次の一手 | 価格と内容は適切か。決裁の流れは把握できているか |
| 受注・失注 | 契約、または記録された失注理由 | 来月は何を変えるか |
提案を送ったあとの段階です。日本の法人営業では、担当者が前向きでも、社内の稟議や決裁者の承認が必要になることが少なくありません。そのため「提案送付済み」を1つにまとめず、「社内検討中」の期限と次回の確認日を別に持つと、放置を防げます。
ボードには決裁者の役職、検討期限、次に確認する日付の3点を最低限入れます。これだけで、返事がない案件を「待っている案件」と「忘れている案件」に分けられます。
パイプラインは案件と行動を見るもの、ファネルは件数と転換率を見るものです。IBMの説明によると、パイプラインは営業担当者が案件を前に進めるために取る行動を追い、ファネルは各段階を通過するリードの数を示し、案件が離脱するにつれて数が減っていく様子を表します。
| 観点 | 営業パイプライン | 営業ファネル |
|---|---|---|
| 見る視点 | 売り手が次に何をするか | 買い手が何件、次へ進むか |
| 数える単位 | 個別の案件 | リード全体 |
| 主な数字 | 案件金額、段階、滞留日数 | 段階ごとの転換率 |
| 使う場面 | 今日の仕事を決める | 離脱が多い段階を見つける |
| 見直す頻度 | 毎日または毎週 | 毎月 |
どちらも必要で、元になるデータは同じです。パイプライン上の案件を記録し、各段階に到達した件数を数えれば、ファネルは追加の手間なしで作れます。次の章の転換率は、この件数から出します。追うべき指標はCRM指標の記事でまとめています。
目標の受注件数から、段階ごとの転換率で逆算します。受注件数を受注率で割ると必要な提案数が出ます。それを商談化率で割って必要な商談数を出し、さらに接触からの商談化率で割ると、連絡すべき企業数が分かります。
次の表は、受注3件を目標にした計算例です。数値はあくまで例示で、業界の基準値ではありません。数バッチ分の実績が出たら、自社のボードから出した数字に置き換えてください。
| 段階 | 次へ進む率(例) | 受注3件に必要な数 |
|---|---|---|
| 受注 | 目標 | 3件 |
| 提案送付 | 5件に1件が受注 | 15件 |
| 商談確定 | 2件に1件が提案へ進む | 30件 |
| 初回接触 | 4社に1社が商談になる | 120社 |
件数と同じくらい、各段階の滞留時間が重要です。リトルの法則は待ち行列理論の定理で、安定した系では、長時間平均した系内の数は、平均の到着率と、系内で過ごす平均時間の積に等しいとされています。
これを提案段階に当てはめます。毎週一定数の案件が提案段階に入り、それぞれが回答待ちで一定期間とどまるなら、いま提案段階にある案件の数は、この2つを掛けた数になります。次の確認日を決めて回答待ちの期間を短くすれば、同じペースで案件が入っても、ボードに溜まる未決の案件は減ります。この法則は長期の平均の話なので、計画の点検に使い、日々の予測には向きません。
上流から作ります。市場を絞り、その範囲の企業をすべてリスト化して最初の段階に入れ、同じ件数ずつ連絡します。このリスト作りが抜けやすく、パイプラインが空になる原因もここにあります。以下は「大阪市の歯科医院」を例にした手順です。リスト作りの全体像はリードリストの作り方にもまとめています。
「大阪市の歯科医院」「福岡市の税理士事務所」「札幌市の工務店」のように具体的に決めます。絞り込むほど、載っているすべての企業に当てはまる提案を1つ作れます。
Vonselは、Googleマップ上の企業情報を集め、各企業のウェブサイトを確認して、公開されているメールアドレスや電話番号などを探します。見つかる内容は各ウェブサイトの公開状況によって変わります。手順はチュートリアル動画で確認できます。地図データを使った探し方はGoogleマップデータで見込み客を探す方法も参考になります。
CRMの地図上で、段階ごとに企業を整理し、メモ、タグ、カスタムフィールドを加えます。カンバンで全体を見渡し、カレンダーでフォローの予定を管理します。
毎週同じ件数を送ると、転換率を比べやすくなります。連絡手段はアウトバウンド営業の記事で整理しています。
前の表の終了条件を当てはめます。すべての案件に次の行動と期日を入れ、どちらかが空の案件は週次の見直しで必ず洗い出します。
各段階に進んだ件数を数え、転換率がいちばん低い段階から直し、次のバッチで同じ手順を繰り返します。
対象になる企業がどれくらいあるかは、総務省統計局の経済センサスで全体像をつかめます。経済センサスは、事業所と企業の基本的な構造や経済活動の状況を明らかにする統計で、基幹統計に位置づけられています。契約前に、自分の地域と業種にどれだけの事業所がありそうかを把握しておくと、リストの規模を見積もりやすくなります。プランによってCRMで管理できる企業数が異なるため、大きなリストを作る前に料金ページを確認してください。
段階の基準があいまいになり、期待で案件を動かし始めると、パイプラインは実態とずれます。原因の多くは次の5つの習慣です。
ツール選びで迷う場合は、中小企業向けCRMの記事で、軽く始める方法と本格的に管理する方法を比べています。
対象になり得ます。総務省と消費者庁などのパンフレットは、法律の対象を広告宣伝のために送信される電子メール全般とし、受信者が法人かどうかで分けた記載はありません。原則として、あらかじめ同意した相手にだけ広告宣伝メールを送れる「オプトイン方式」です。
同意なしに送れる例外として、取引関係にある相手、名刺などの書面でメールアドレスを通知してくれた相手、そして自分のアドレスをインターネットで公表している相手(個人の場合は営業を営む場合に限る)が挙げられています。ただし、アドレスの公表と併せて広告宣伝メールを送らないよう求める旨が公表されている場合は、同意なしには送れません。
送信するときの義務は次のとおりです。パイプラインの運用に組み込んでおくと、抜け漏れを防げます。
| 場面 | 押さえる点(パンフレットの記載) | ボードでの管理例 |
|---|---|---|
| 送信前 | 原則オプトイン。同意の根拠、または例外に当たる理由を確認する | 連絡先ごとに「同意」「名刺」「公開アドレス」などのタグを付ける |
| 送信時 | 送信者の氏名または名称、受信拒否の連絡先(メールアドレスまたはURL)を表示する。送信者情報の偽装は禁止 | メール文面のテンプレートに表示項目を固定する |
| 同意の記録 | 同意を得た時期と方法の記録を、最後に送信した日から1か月保存する。措置命令を受けた場合は1年 | 同意日と取得方法をカスタムフィールドに入れる |
| 受信拒否後 | 受信拒否の通知を受けたら、以後の送信は禁止。通知の記録も残す | 「配信停止」タグを付け、全送信から除外して段階を戻さない |
| 違反した場合 | 措置命令に従わないと1年以下の懲役または100万円以下の罰金。法人には3,000万円以下の罰金 | 運用ルールをチームで共有する |
例外の細かな条件や、通信販売の電子メール広告に適用される特定商取引法との関係は、パンフレットで確認してください。法人向けとB2Cで扱いが違う点はB2BとB2Cのデータに関する法的な違いでも解説しています。ここでの内容は一般的な情報であり、法的助言ではありません。